九江市の旅


灰色の部分が江西省です。

【 目  次 】

<2003年8月13日>
 
・プロローグ
 ・信頼の目安
 ・間一髪
 ・グースカ、グースカ

<2003年8月14日>

 ・南昌を貫け!
 ・運転手の勧め
 ・観光地巡り
  ・夜の九江
 

2003年8月13日
プロローグ
 意外な成り行きで赴くことになった「江西省」。今回は二人旅ということもあって、省都「南昌」は通り過ぎるだけとなってしまった。また、有名な「景徳鎮」も訪れることができなかった。しかし、代わりに「廬山」・「三清山」という名高い山を踏みしめることができて、非常に満足な旅となった。ボチボチと書きますので、お時間のある時にご覧になってください。
信頼の目安
 昨日購入しておいた切符は夕方6:14分「東莞東駅」発、「(江西省)南昌」着のもの。私自身は駅前をバスで通りがかったことがあるだけで「東莞東駅」を利用したことはない。私だけなら、広州駅までバスで行ってそこから列車に乗り換えたところだが、友人Pは乗り物酔いをしやすくバスは大の苦手なのだ。タクシーなら大丈夫だという大変わがままな体質だ。
 しかし、「広州駅」までタクシーを飛ばすと200RMB以上はかかる。これはたまらない。私が悩んでいると、Pが「東莞東駅」から行こうという。以前に利用したことがあるのだそうだ。までなら白タクで130RMB前後となる。広州までバスで飛ばしても二人分のチケットで90RMBだからほとんど変らない。ルートは決まった。

 アパート出発は午後3:40分、のはずだった。午前中に利用したタクシーの運転手が「東莞東駅」まで120RMBでいくというので、約束しておいたのだ。口調も真面目で好青年という感じだったし、心配ないだろう。

 3時30分、アパート近くのホテル前でPとタクシーを待つ。Pが電話をしてみろとうるさいので、確認の電話を入れる。すると、「今、別の客を乗せていて少し遅れる。3時50分には行くから待ってくれ。50分には必ず着く」とのこと。腹が立つが120RMBで「東莞東駅」まで行ってくれるタクシーはなかなかいない。しばらく待ってみることにする。

 3時50分、やはり来ない。別のタクシーで行くかと数人の運転手に料金を尋ねてみるが、どれも150RMBどまり。やはりもう少し待ってみることにしよう。

3時55分、焦り始める。夕方は渋滞が発生しやすい。雨でも降ったら、2時間以上かかる可能性もある。何度も運転手に電話するが、「もう着いた、目の前だ。お前たちはどこにいるんだ」などと嘘までついて時間を引き延ばそうとする。堪忍袋の尾が切れて、周囲のタクシーと真剣に料金交渉を始めた。

 130RMBで行くという馴染みの白タクを見つけたところで、ようやく約束していた運転手の車がやってきた(4:05)。かなり不愉快だったが、一生懸命謝っているので許してやることにする。急いで乗り込むが、ここでPが地元の知人と遭遇し、立ち話を始めた。おーい、時間がないよ。

 ようやく話を終えたPが乗り込んできたところで、今度は運転手の方に怪しい動きが・・・。なんと別の運転手と代わろうとしているのだ。理由を尋ねると、「俺は『東莞東駅』までの道を知らないんだ」という。冗談じゃない。真面目な奴だからと思って待っていてやったのに、この上別の運転手に代わるだと。Pに向かって「下りる!」と宣言して、荷物を車の外に出した。運転手は慌てて引き止めにかかるがもう遅い。全く知らない運転手の車に乗ってトラブルにでも巻き込まれた日には対応のしようがなくなる。安くて良い車だからと我慢していたが、もはや限界だ。まして、今日は女性を連れているのだ。リスクは避けなければならない。
 さきほど話をつけておいた馴染みの白タクを呼び出して再度料金を確認し、二人で乗り込んだ。10RMB高くなるがやむをえない。
間一髪!
 5:30、「東莞東駅」。荷物を検査機のベルトコンベアに乗せ通過させ、中へ入る。電子掲示版で調べると、私たちは第一待合室で待たねばならないらしい。私たちのチケットは「軟臥(グリーン寝台車)」だから、駅によっては専用の待合室があって少しゆったりと過ごせるのだが、「東莞東駅」には専用待合室はないようだ。仕方なく、混雑した部屋に入り込み席を探し、腰を落ち着けた。

 6:05、改札が開き、乗客がプラットホームへ走りこむ。私たちは「軟臥(グリーン寝台車)」なので、席の奪い合いをする必要はないのだけれども、皆につられて走り出した。

 車両まで辿りつくと、入り口に立っている駅員さんにチケットをみせ中に乗り込む。だが、おかしい・・・。車両に入りこんで、すぐに疑問が湧きあがった。造りが「硬臥(普通寝台車)」にそっくりなのだ。
 「軟臥(グリーン寝台車)」と「硬臥(普通寝台車)」の違いは、主に三つ。①「軟臥」はドアつきの部屋に分かれている。「硬臥」はドアなし。②「軟臥」のベッドは「硬臥」よりも清潔である。③「軟臥」は一部屋が主に上下2列の4つのベッドで構成されている。「硬臥」は6つ。
 ところが、私たちが乗り込んだ車両のベッドにはドアがついていなかった。これは「軟臥」では見たことがない形式だ。一方で、ベッドには清潔なシーツが敷かれていて、私の知っているシート剥き出しの「硬臥」のベッドとは異なり、むしろ「軟臥」のベッドに近い。一室のベッド数が上中下の2列で合計6つとなっているは「硬臥」の特徴だが、「軟臥」でも同様な場合があるので、確たることは言えない。
 一人でいるときは、ここでじっくりと考えを凝らすのだが、今回は二人旅。Pはすでに部屋探しに懸命、荷物を抱えて通路を走り出している。疑念を抱きつつも後に続かざるを得ない。

 そうして、前後の車両を確認したあとようやく立ち止まった二人は同じ結論に達した。駅員さんに聞いてみよう!まだ、車両の入り口に立っていた、さきほど私たちのチケットを確認してくれた駅員にチケットをみせ、「これはこの列車のチケットか?」と尋ねる。すると、駅員は「違う」と首を横に振るではないか。

なんと、列車を間違えて乗ってしまったのだ。改札を抜けた皆と同じプラットホームに進んだつもりだったのに・・・。それでは我々の列車はどこに!慌てて駅員に尋ね、その指差す方向に突き進む。が、そちらは階段しかない。「どっちだ?」と私が声に出すと、Pが先ほど下りたばかりの列車を指差し「向こう側よ!」と指差す。なるほど、階段を下りて向こう側のプラットホームに行けば列車があるということか。階段を指差されただけでそこまでわかるとはさすが大陸人。あるいは私が鈍いだけなのかもしれない。

 あとは突っ走るだけ、と思いきや、階段のそばでオバさんに呼び止められる。1RMBと書かれたチケットを出し、プラットフォーム管理費を払えだとかなんとか言っ+ている。怪しげだか、もはや真偽を確かめている余裕はない。二人分の2RMBを押し付けてチケットをもらおうとするが、「お金じゃない、改札口で別のチケットをもらっただろう」と手を振られる。
 そんなものもらってねーよ。Pを目で追うと、すでにオバちゃんを無視して階段の下まで突き進んでいる。ここまで来たら仕方がない。私も懸命に呼び止めようとするオバちゃんを後ろに走りだした。

 隣のプラットホームに駆け上がると、大勢の乗客が手持ちぶたさにブラブラしているのが目に入った。なんだ、まだ来てないじゃん。だが、まだ気を緩めてはいけない。安心するのは他の乗客の行き先を確認してからだ。すぐそばの乗客に尋ねてみると、ちょうど同じ行き先。ほっと一息ついた。

 数分で列車が到着した。乗車してみると、お馴染みのドアつきコンパートメントの内部に上下二列のベッドが見えた。今度こそ正真正銘の「軟臥」だ。
グースカ、グースカ
 番号を確認して、定められた部屋に入る。おしゃべり好きのPは下のベッド、できれば静かに過ごしたい私は上のベッドだ。対面には下のベッドに赤ちゃんを抱いた母親、上のベッドには40歳半ばほどの男性がやってきた。
 中国では、一般に昼間は全員、下のベッドに腰掛けて話をする。下のベッドは他人の席だからという遠慮はない。自分のベッドだから座るな、などというとやけに狭量な奴だと思われてしまう。プライベートを重んじる日本人からしてみれが、下のベッドはうっとおしいことだらけなのだが、中国人は下のベッドが好きである。5%ほど値段が高いにも関わらず、余裕がある人は進んで下のベッドを選ぶのだ。極めて外向的な民族である。

 下のベッドに座って、皆がざっくばらんに自己紹介をし終わった(誰もがするというわけではない)頃に、添乗員がやってきてチケットとカードを交換する。「軟臥」の場合、乗車中はチケットは添乗員が預かることになっているのだ。(過去に乗った「軟臥」ではカードではなく、アルミの小さなプレートだった)。また、交換時には身分証の提示を求められる。身分証は代替可能な別の証明書でもかまわない。外国人の場合にはパスポートか居留証が一般的だ。
 
 気が付くと、列車は走り出していた。時間はすでに6:30。Pがお腹が空いた、ご飯が食べたいと騒ぎ出したので食堂車へと連れ出した。夕食用にカップラーメンを買ってあったのだが、このPは本当にお腹が空いたときには面類を受け付けなくなるやっかいな体質なのだ。

 食堂車に移ると、一人30元だよ、と言い渡された。
 (高い・・・、以前に食べたときは20元だったのに、ハイパーインフレだ)と思ったが今更席に戻るわけにもいかない。チケットを2枚買って席に座る。しばらくすると、4種類のおかずとご飯が出てきた。一応、魚料理と肉料理と卵、野菜料理が揃っているがどれも塩辛いだけの味付けだ。これなら、おかずの種類を絞ってもっときちんと作ったほうがよいと思うのだが、食堂車が私の要望を受け入れるはずもない。Pが塩辛い、塩辛い、と騒ぎ立てるのを横目に大人しく食べ続けた。

 文句を言いつつもお腹一杯になるまで食べた二人はそれなりに満足して客室へ戻った。さっそく隣のベッドの女性が連れた赤ちゃんにちょっかいをかけ始めるP。しこたま買ってきたお菓子を片っ端から赤ちゃんに差出し、「そんなに固いものはまだ食べられないわ」と女性にたしなめられている。子供嫌いだと言っていたが、子供と遊ぶのは好きらしい。

 私は上に上がって一眠り。中国人の基礎体力は高い。女性だからと言って侮れない。また、夜になって急に寝付けなくなることもある。少しでも体力を稼いでおくとしよう。

 夜11:00、眠りから覚め下へ下りると「起きたの?」と声がかかった。Pはこれから眠るところらしい。私は顔を洗って再びベッドに戻り、今度はガイドブックを取り出した。明日は南昌だ。今回の江西省への旅は二日前に急に決まったのでろくに下調べもしていない。「地球の歩き方」と中国人向けの旅行ガイドブックを交互に眺めならが情報を仕入れる。

 (南昌は観光できるようなところが少ないな)と考え始めていたところで、異変が発生した。「グー、ピー、グルグル、ゴア-・・・・・」と室内に高いびきが轟き渡り始めたのである。出所は私の対面のベッドで眠りについたばかりの男性である。そちらに目をやると、「ピー、グルグル、ゴアー、ゴア-」と気持ちよさそうにしている。(私は寝たばかりだからよいが・・・)と下に目をやると、不機嫌そうな顔をしたPと目が合った。何やら指で合図をしている。

 なんとかしろ!ということらしい。(そんなこと言われてもなぁ)。一度起こしたところで、しばらくすれば同じことの繰り返しだし、そもそも私自身はこれぐらいのいびきで眠れないということはない。耳栓をもってきていれば貸してあげるのだが、持ってくるのを忘れてしまった(実は持ってきていたのだが、それを忘れてしまっていた)。怒り狂っているPを尻目に南昌の研究に励む。ときどき下に目をやるとPは相当不機嫌そうだ。

  明日の予定に頭を巡らせながらも男性の動向に注意していると、そのいびきには周期があることが判明した。20分ほどいびきをした後には、10分ほど静かになるのだ。いびきをするのも体力を消耗するのだろうか。いびきの休憩時間だ。それなら、その静かな10分の間にこちらが寝付いてしまえば問題ない。いびきの間隙をぬってもう一眠りすることにした。
2003年8月14日
南昌を貫け!
 朝2:30、目覚め。ベッドを下りて、窓際の椅子に座る。列車の外はまだまだ真っ暗だ。南昌に着くのは4:00だから、まだ1時間以上あるけれども、到着前に今日の予定を立てておかなければならない。ガイドブックを取り出し、具体的な計画に入る。

 「南昌」は省都だからそれなりの発展を遂げているだろうが、いかんせん、観光個所が少ない。それは昨晩調べたばかりである。強行軍で回れば一泊で十分だ。しかし、女性を連れて一泊で移動を重ねる旅はあまり好ましくない。次の目的地への移動手段の確保と観光を一日でやってしまわなければならないからスケジュール重視の行動になってしまう。必然的に相手を気遣っている余裕などなくなるわけだ。
 もう一つの問題は、到着が夜明け前だということだ。夜明け前では部屋を安く確保することができない。安い部屋は大抵埋まってしまっているから、せめて10:00頃にならないとチェックインできないのだ。

 さて、困った。ガイドブックと時刻表を行ったりきたりしながら悩む。と、閃いた。「南昌」の先にある「九江」まで一気に足を伸ばしてみてはどうだろう?「九江」には観光名所が多いし、近くには「廬山」もある。2泊3日で過ごすにはもってこいだ。

 「南昌」と「九江」までの距離は列車でおよそ2時間である。この列車でそのまま行ければ6時過ぎには到着できる勘定だ。ただ、チケットの買い替えができるのか?仮に買い換えができたとしても、「南昌」と「九江」間が新規購入扱いになってしまうと、「軟臥」の最低料金基準に引っかかってしまって馬鹿高い料金を支払わねばならなくなる。それならば、一旦「南昌」で下車して「硬座」のチケットを購入しなおしたほうがいい。

  ちょうどPがベッドから抜け出してきたので、要旨を伝え、添乗員のところまで話をつけていってもらうことにした。私がベッドに横たわって待っていると、5分ほどでPが戻ってきた。

 「新規購入扱いになるんだって・・・」
 「いくらアップになるの?」
 「一人100元ちょっと」
 「だったら、南昌で降りよう」とささっと決定。

 4:10に「南昌」へ到着。周囲は真っ暗だ。まずは「九江」行きのチケットを確保しなければならない。チケット売り場へ行くと、すでに短い列ができている。24時間運営なのだろうか。またもやPにチケット購入に行ってもらう。なんだか悪い気もするが、私が荷物を見張ったほうが確実だから仕方がない。

 しばらくすると、「5時発のは一枚しかないってよー、どうする?」という声が聞こえてきた。(どうするもないもんだ。お前一人でここに残るのか?)と思いながら、「じゃぁ、5時のはダメだ。次の便のを聞いてくれ」と指示を出す。

 結局、6:00発のチケットを2枚購入(硬座で一人20RMB)。
 出発までまだ1時間30分ある。さあ、どうするか。
 一休みしようにも、この時間では喫茶店もない。むなしく駅前を歩いていると、タクシーの運転手から休みなしに声がかかる。「どこに行くんだ?」「九江に行くからいいよ」と断ると、「だったら商店街にでも行ってみないか?」ときた。(こんな夜中に商店街に行ってどうするんだ)と心でつぶやき無視をすると、横からPが「街をひと回りしてくれない」と要求を出した。運転手は大喜びで、「50RMBでどうだ!」と持ちかけてきた。私は当然、首をグリグリと横に振った。「だめだ」。
 結局20RMBまで値段が下がったところで、Pが「20RMBだよ。いいでしょ」と頼み込んできた。仕方ないな、真っ暗で何も見えないけど少しでも回っとけば次に来たときに役立つかな、と私も折れた。

 タクシーに乗った途端にキャッ、キャッと喜び始めるP。あれは何だ、これは何だと聞きまくる。つられて運転手も一生懸命に説明をする。Pに乗せられて最後には大きな河を横切る橋を往復するほどの大サービス振りであった。Pは帰り道もあっちに行ってくれ、こっちに行ってくれと楽しげに要求したが、運転手はさすがに後悔したのだろう。少し沈黙状態になって一路駅へ向かった。そして、下車間際に「かなり走ったから40RMBくれよ、メーターは50RMB以上になってるぞ」と切り出してきた。どうするのかなと見ていると、「20RMBという約束だったんだから、言ったことは守ってよ」と意外に手厳しい。運転手も苦笑いをしながら引き下がった。

 出発までの20分を駅前でナッツをポリポリとやって過ごし、すっかり明るくなった6:00に乗車。わずか2時間の滞在で「南昌」を後にした。

 「硬座」ではあったけれども、客が少なく4人席を二人で占めることができた。私はすっかりくつろいでいい気分。私の気分と相反するようにして、対面のPは不機嫌いっぱいの顔で「眠い、眠い」とつぶやき続ける。しまいに「あのまま軟臥に乗っていれば、眠って行けたのに」と勝手なことまで言い出した。「南昌」ではあんなにはしゃいでいた癖に・・・。
運転手の勧め
 8:10、「九江」着。

  まずはホテル探し。「地球の歩き方」で紹介されていた五豊賓館からあたってみようと、タクシーを走らせる(九江のタクシーはとても安くて、初乗りは5元であった)。中途で、「いいホテルはないか?」と尋ねると、「九江大酒店がいいよ。新築だし、政府が建てたホテルだから安心だ。部屋も安いのから高いのまでいろいろある」という。そう言えば、「地球の歩き方」に「其士九江大酒店」というホテルも紹介されていた。「其士九江大酒店のことか?」と確認すると、「違う。別のホテルだ」とのこと。
 そうなると難しい。過去、運転手が「値段が手頃でなおかつ良い」と言ったホテルで快適だったことは一度もないからだ。ただし、「新しいホテルだ」といった場合には満足度が高い場合が多い。そこで、「九江大酒店は本当に新しいホテルなんだな?」と確認をする。すると、「古い部分もあるが、新しく作った部屋もある。大きなホテルなんだ」と回答が返ってきた。「それに、政府が経営しているホテルだから安心だよ」と宣伝つき。(なんだか、調子のいい話だな)とは思ったが、行ってみるだけなら損はない(タクシー代5元損するけどね)。

 ホテルについて外観をみると、やけに古ぼけている。これで新しい部屋なんてあるのかな、と考えながらフロントで料金交渉。288RMBのツインルームが230RMBとなった。料金はOKだ。あとは部屋だ。エレベータに乗って指定の階で下り、フロントが指定した部屋へ向かう。途中で服務員がついて来て説明をしてくれる。「政府の経営だから安心ですよ」。(それしか売り物がないのか)と疑問が頭を渦巻き始める。部屋の内部はリフォームしてきれいにしてあった。ただ、きれいにしてあってもそれはリフォームであって、新しい部屋ではない。これが私の認識だ。タクシーの運転手の言葉にあったニュアンスでは、敷地内に別に新しくつくった建物がある、ということを意味していたはずだ。やーめた。

 料金をさらに下げるから、と懸命に引きとめるフロントの服務員を振り切って先ほどのタクシーに乗り込む。念のため、待たせてあったのだ(正確には相手が待ちたいと言ってきた)。そして、席に座るなり文句を言った。「新しい部屋じゃないじゃないか、あれはリフォームだよ」。
 運転手は一瞬黙り込んだあと、「そうだリフォームだ。新しく作ったんだよ」と答えた。「それは新しく作ったとは言わない。リフォームだろう」と黙らせ、「まあ、いい。最初に予定だった五豊賓館まで行ってよ」と指示をする。

 車を走らせて20メートルほどのところで、「あれが其士九江大酒店だ。外人がよく泊まる四星ホテルだ」と運転手が前方のホテルを指差した。四星となるとずいぶん高いはずだ。でも、ここは大分辺鄙な場所だから意外に安いかもしれない。そう考えて、中を覗いてみることにした。タクシーを待たせておいて、フロントで料金交渉。

 四星ホテルの割には安いツインルーム390RMBを値切って、358RMB(+10%のサービス料)となった。部屋も確認してまずますの満足。設備はとても四星のレベルに達しているようにみえないが、服務員の物腰がやわらかいのが気に入った。保証金も含めて800RMBを支払う(9:00)。
観光地巡り
 シャワー浴びて一休みし、10時40分に出発。ホテルの近くをブラブラした後、「JCC家常菜」という地元の中華レストランに入った(11:55)。内装がとてもきれいで、料理も安くておいしいという三拍子揃ったお店であった。深センだったら屋台でしか食べられないような値段で立派な料理が注文できる。Pはさかんに安い、安いを連発している。観光地でこんなことをいうのは日本人のツアー客ぐらいかと思っていたら、中国人もいうんだな、と勉強になった。「あんまり安い、安いっていうな。強盗やひったくりに狙われるぞ」とたしなめるが、全く耳に入っていない様子だ。先日ひったくりにあったのも、運が悪かったぐらいにしか考えていないのだろう。先が思いやられる。うらやましくなるほどの無頓着さだ。

 食事を終えた頃にはすでに13:00近くであった。タクシーをつかまえて観光地「琵琶亭」へ走る(5RMB)。

【琵琶亭】

 「琵琶亭」の外回りはやけに古ぼけていて、乞食寺のような様子であった。それでも、一人5RMBをきちんと要求される。「琵琶亭」は唐時代に白居易が歌った詩にちなんで建設されたとのことである。

 私もPも歴史にはとんと疎いので、ぐるりと一巡りしただけで、外へ出る。「琵琶亭」は長江に沿って建てられており、「九江長江大橋」のすぐそばにある。この巨大な橋は1991年に建設が終り、 車道と鉄道の両方に使用されている。ガイドブックによると、車道と鉄道で両用の橋としては世界最大のものらしい。

【九江長江大橋】

 橋をバックに写真を数枚とったのち、河際で涼みながら昼寝を楽しんでいたタクシーの運ちゃんを起こし、次の観光地「鎖江楼塔」まで運んでもらった。(橋のたもとに鉄橋博物館というものもあったのだが、公安か武装警察らしき人間が機関銃を抱えてドアのところに突っ立っていて不気味だったので入場は思いとどまった)。

【鎖江楼塔】

 「鎖江楼塔」は改築中で、中には入れなかった。九江では観光資源の開発に相当力を入れているらしく、完成したらずいぶんと立派な建築物になりそうだ。長江の川沿いにも城壁風の美しい壁が作られて、散策が楽しめるようになっている(13:50)。

【潯陽楼】

 再びタクシーを走らせて、今度は「潯陽楼」へ到着。一人6RMBを支払って入場する。「潯陽楼」は水滸伝で宋江が反詩を書いた場所ということになっていて、108の英雄をモチーフにした彫り物や絵がそこかしこに置かれている。2Fは中国のドラマに出てくる茶楼そのもの。今にも水滸伝の英雄が現れてきそうな雰囲気であった。3Fからは長江が気持ちよく見渡せる。さきほどの「九江長江大橋」の巨大さもいっそう際立ってみえた(14:00)。

【潯陽楼の中】

「琵琶亭」、「鎖江楼塔」、「潯陽楼」まではすべて長江沿いにあるが、次の行き先である「天花宮」は長江のすぐ内側にある甘棠湖と南門湖の中を抜ける道路際に建てられている。タクシーが見つからなかったので、バイタクに乗り3分ほどで到着。

【天花宮】

  「天花宮」の改修は全くされておらず、ボロ寺状態。入場料はないが、線香を買えとうるさい。その上、跪いて神様にお祈りしろという。無視をして中に入る。内部もすっかり寂れていて、朽ち果てる寸前という状態であった。ガイドブックによると子宝の神様だという話だから参拝客でひきもきらない時期もあっただろうに、そのお金はどこへ行ってしまったのだろうか(14:40)。

【煙水亭】

  そして、次は「天花宮」の対岸にある「煙水亭」である。私は歩いて行こうと主張したのだが、Pの「だったら一人で行きなさい。私は先にタクシーで行って待っているから」の一方的な物言いに負け、バイタクに乗ることになった。3分ほどで到着。

 「煙水亭」は、三国志で有名な悲劇の将軍「周瑜」の練兵所だったそうだ。もっとも、現在のものは再建されたもので、位置も少し変っているとのことだ。とにかく、「周瑜」いわくつきの建物。三国志ファンの私としては思い入れが深い。こじんまりとした建物が湖にポツンと浮いていて、誇り高く、孤独な天才将軍の居場所にピッタリではないか。「周瑜」の属していた呉の国は水軍で有名だったというから、ここから湖の上に浮かぶ戦舟に次々と指示を下していたのだろう(15:10)。

  「煙水亭」を出て、中華ファーストフード店で休憩をとる。私はコーラ、Pは糖水を二碗。「ここの糖水は一碗で1元よ。安いわよねぇ」とPはここでも安い、安いと連発する。(まっ、好きに言わせとこう)と運命を半ば受け入れた私であった(15:20)。

 疲れが抜けたところで、再出発。今日の最終目標「能仁寺」へ向かった。「能仁寺」はもとは「承天院」と呼ばれ、南朝梁武帝時代に建築されたものだそうだ。それが明時代に能仁寺と改名されたとのこと。

【能仁寺】

 「能仁寺」も工事中であったが、一人10RMBを支払って中に入った。中は広々としていて、建物も古代の面影を残した重厚な造りであった。工事がそこかしこで行われているのでなければずっと良い印象だったことだろう(16:15)。

 九江の主要な観光地はこれで全て見て回った。そこで一旦ホテルに戻ることにする(16:30)。

夜の九江
   一日歩き回って汚れた服をクリーニングに出す。ホテルのクリ-ニングは一着3-8RMBほど(スーツはもっと高い)。いつもは一泊で移動していくことが多いので手洗いがほどんどで、乾かすのに苦労している。今回は二泊できるからずいぶんと楽だ。昨日の列車の旅と今日の観光地巡りの疲れを洗い流して、一眠りをする。

 目覚めてみると、時はすでに6時。のんびりしていると夜中になってしまう。Pを急き立てて夕食に出掛けた(18:45)。タクシーをつかまえて繁華街と思われる方向へ出掛けた。ところが当てが外れ、そこは住宅街であった。そこで方角を変えて、駅の方向に向かってもらうことにする。途中、良さそうなお店が何度もあったのだが、運転手は何やかんやとケチをつけ、「もっといい場所がある」と車を先に走らせる。「駅から来たときは5元だったぞ。5元でいけるんだろうな」と念を押すと、「それは無理だよ。駅までは遠いんだ。メーターがあるから問題ないだろ」と言って来た。今日は全部5RMBだったから、市内全て5RMBかと思っていたが違うらしい。
 
 失敗したなと考えているうちにメーターが上がりだした。(一旦降りようかな・・・)とも考えたが、今日はPがいる。こんなところで運転手と戦ってみせるわけにもいかない。やむなく、「10RMB以下で行けない場所だったら行かなくていいぞ。行っても金は払わないからな」と防衛線を張って済ますことにした。

 結局、駅近くの屋台村のようなところへ連れていかれ、9RMB弱。朝は同じ距離で5RMBだったから少し悔しい。夜だから仕方がないかと自分を慰める。Pはすでに大喜びでテーブル探しを始めている。広場にはすでに客が溢れ返り、各地からきた旅行者やら労働者が食事を始めていた(19:00)。

 テーブルに座り、注文を済ませ、料理がくるのを待つ。しかし、待てど暮らせど料理がこない。お店の人に聞くと、「鍋が足りない」とのこと。もう帰ろうかな・・・、と考え始めたところでようやく縁の欠けた土瓶鍋に料理が入ってやってきた。

【縁の欠けた土瓶の鶏鍋】

 長く待ったわりにはしけた料理がやってきたなとがっかりしながら、煮え立つのを待つ。ころあいをみて二人とも箸を伸ばし、味をみた。うん、なかなかいける。見かけによらず、いい味を出していた。二人で交互に箸を伸ばしているうちに鶏肉は瞬く間になくなった。「味はいいんだけど、鶏肉の量が少なすぎるわ。一羽っていったのに嘘ばっかり」とPは少し不満げだ。会計のときにも、「味は良かったんだけどね、・・・」と同じことをのたまわっていた。飲み物も合わせて二人で50RMBちょっと。まずまずだ(20:40)。

 ホテル前に戻ったところで、9時少し前。まだ時間が早いので、しばらく散歩を楽しむことにした。まずはホテル近くのデパートをぐるりと一巡り。私のアパートがある街のデパートよりもずっと高級感があって落ち着いた雰囲気だ。こんな内陸の、省都でもない場所のデパートのほうが(特区外とはいえ)深センのデパートよりも立派だというのはどういうわけだろう。そう不思議に思って考えてみると、思い当たることがあった。そう、この九江のデパートには出稼ぎ労働者が買い物に来ないのだ。だから、買い物客も地元の富裕層に限るし、商品も自然と高級品が多くなってきているのだろう。

【地元のデパート】

 デパートを出て道なりに歩いていくと偶然、昼間に行った「煙水亭」のまん前に出た(21:44)。湖の周辺には夜店や屋台が溢れ、涼みにきた地元に人々でいっぱいになっている。「煙水亭」はライトアップされて、まるで湖に浮かぶ黄金城のようだ。

【夜の煙水亭】

ひとしきり散歩をして、10:30にホテル着。明日は「廬山」行き、さっさと眠って力を蓄えよう。   

続きは「廬山」編をご覧ください。