「外馬路」が海に近づいてくると、そこは『老街』だ。日本風に言うと、古い街並みというところだろーか。中国の都市にはたくさんの「古い街並み」があるが、観光ように整備されていないので、「古い」というより「ボロイ」という感じになってしまっているところが多い。残念ながら、汕頭の『老街』は後者に属した。
ごちゃごちゃした道を適当に海に向かって歩いて行くと、「西堤波止場」に出た。「地球の歩き方」によると、ここから対岸の観光名所に行けるはずだ。波止場の周りには人力車やバイタクがたくさん集まっており、下船客を待っている。彼らを避けながら、改札で1RMBを払って中に入る。1RMBとはずいぶん安いな、と思っていると、野菜売りのおばちゃん達や小物売りのお兄ちゃんも船の到着を待っている。どうやら、この船も観光客用というより庶民のためのもののようだ。10分ほどで船が到着。皆といっしょに乗り込む。船の1Fはバイク置き場になっていて、バイクに乗ったまま船に乗れるようになっている。2Fは乗客用だが、木の長ベンチが6個置いてある程度の簡素なものだ。20人ほど乗り込んだところで船が動き出した。
対岸までは10分前後で着いた。香港島と九龍島の間を行き来している船に乗っているのと同じ感じだ。船の質はだいぶ違うが・・・。船を下り、波止場を降りるとさっそくバイタクの兄ちゃんに取り囲まれた。それを振り切って、正面にある海浜公園に2RMB払って入ってみる。ところが、これは失敗。所々にゴミが積んであるだけの汚い公園だった。でも、人があまりいないので、安心して地図を広げられる。さあ、どこに行ったらいいのか?
「地球の歩き方」を見ると、「白花尖大廟」という所が名所とされている。なんだかわからないが行ってみるとしよう。公園を出ると、ちょうどバイタクが通りがかる。行き先を言うと、5RMBで行くという。おおー、「地球の歩き方」で書かれていたよりも安い。その上、この運ちゃん、人が良さそうだ。安心して乗る。
2,3分ほど走ったところにある「天壇花園」という塔らしきものがあるところで、バイタクの運ちゃんが「着いたぞ」という。しかし、地図上では、「白花尖大廟」はもっと先にあることになっている。「ここじゃないだろ!」というと、「いやここだ」と返される。仕方ないので、「地球の歩き方」に乗っている「白花尖大廟」の写真を見せる。「ほら、看板の名前が違うじゃないか」と言うと、「わかった。じゃあ、もうちょっと先へ行ってみよう」と納得してくれた。さらに、2,3分ほど走ったが「白花尖大廟」らしきものはない。そこで、さっきのが「白花尖大廟」だったのだろうかと思いなおし、もう一度「天壇花園」へ戻ってもらう。そこで、もう一度運ちゃんに「ここが『白花尖大廟』なのか」と問う。「そうだ」。「なぜ写真と違うんだ?」と重ねて尋ねる。すると、運ちゃんは、「天壇花園」の門の奥にあるもう一つの門を指す。おー、確かにそこには「白花尖大廟」と書かれているではないか・・・。何でさっき言わなかったんだ、おい。(それに何だ、この地図は!注:地球の歩き方の地図ではありません)
さて、ここからが問題。運ちゃんにいくら払うかだ。余計な所に行った以上、最初の約束の5RMBでは運ちゃんは納得しまい。間違ったのは自分だからなー、と弱気になって、「余分に走らせたから、10RMB払うよ」とツイツイ言ってしまった。これが大失敗。「15RMBくれ」と言う。余分なところへ行ったので+5RMB、そこから戻ってくるのに+5RMBだというのだ。「それはとり過ぎだろう(客がいつもいるわけじゃあるまいし、空だって走らなきゃいけないんだから)」と言っても、もう取り合ってくれない。しまいに、周囲のバイタクの運ちゃんにまで自分の正義を訴え始める。もろに中国式論戦術にはまってしまった。仕方がないので、価格の計算方法を変えることにする。
追記(2003年2月):中国式論戦術とは相手と議論するのではなくて、聴衆に訴えて勝利をもぎ取る議論の方法である。ある意味、アメリカの陪審制裁判に似ている。根本は全く違うとは思うが。
「帰りも送ってくれ。帰りはいくらだ?」と聞く。「10RMBだ」と返事がくる。(この野郎、行きが5RMBなのになんで帰りが5RMBなんだよー)と思いつつも我慢をし、「行きと帰りの合計で20RMB。これでいいだろう」と押してみる。しかし、「ダメだ。今のが15RMB。帰りが10RMB。合計25RMBだ」と頑張ってくる。周囲に人が増えてくる。(これは参った・・・。作戦変更だ)というわけで「とりあえず、5RMBを渡す。残りは帰りに決めよう。20分以内に戻るから、それまで待ってろ」と言って、5RMBを押し付け、さっさと切符(10RMB)を買って門の中に入る。後ろで運ちゃんが周囲の人に正義を訴え続けるのが聞こえる。(こりゃ、分が悪い・・・。最初に自分から譲ったのが失敗だった)と後悔するも、もう遅い。