駅前の駐車場を抜けたところに人力車やらバイタクが群れていた。オフシーズンのせいか数は少ない。さっそくリュックから、湛江市ホテル・リスト取り出した。出発前にインターネットで探し出しておいたものだ。地球の歩き方では「湛江市」については全くふれていなかったので、今回はインターネットだけが頼りだったのだ。バイタクの運転手をつかまえて、リスト上のホテルを一つ指さし、「ここまでいくらだ?」と尋ねた。「20RMB」と返事がきた。念のため値切ってみたが15RMBが精一杯のようだ。別のバイタクの運転手に聞いてもやはり同じ答え。どうやらかなり遠いようだ。お金はともかくそんな距離をバイタクでいくのは気が進まない。私があんまり悩んでいるのでみかねた運転手が、すぐそばにあるバス停を指した。「あそこからお前の行きたい場所にいけるぞ!」とずいぶん親切だ。お金がなくてかわいそうだと思われたのだろう。中国人はけっこう同情心がある。或いは商売の邪魔をされたくなかっただけか。
バス停までいって様子をみるとボロボロの大型大衆バスしかない。しかし、選択の余地もなさそうなのでおとなしく乗り込んだ。目的地は発音を知らない漢字の地名だったのでリストを指差して切符を購入した。2.3RMBだ。切符売りのおばさんが身振り手振りをともなって一生懸命何かを言っているがなかなか聞き取れない。「・・・観察(グアン・チャー)」の一言だけが聞き取れた。どうやら、周りをよくみてついたら降りろということらしい。客がたくさんいるから、私一人の面倒はみていられないということなのだろう。それも当然のことだ。しかし、困った。駅の位置は私がもっている中国版ガイドブックの地図の外側にある。従って、バスが広い地図のどの方角から街に入っていくのかがわからないのだ。しかたがないので、地図をじっとみて片っ端から道路の名前を頭に刷り込みはじめた。
そして、バスの外を眺めて、道路名の書かれた標識と頭の中の道路名を照らし合わせる。これを何度も繰り返していると、切符売りのおばさんもかわいそうに思ったのか、「まだまだ、遠いわよ。とにかく座りなさい」と優しい言葉をかけてくれた。(そうか、まだ遠いのか)と思って座るが、やることは同じだ。二つの眼を繰り返し繰り返し地図とバスの外の間で行き来させる。
20分ほどそうしていただろうか、ようやく地図上の道路名と一致する標識を発見した。しかし、私が想像していたのとは全く正反対からの方向だった。そうしてみると、私が泊まろうとしているホテルはかなり郊外にあるのかもしれない。しかし、すでに眠くて眠くて仕方がない。もはや別のホテルを探しに歩き回る元気はなさそうだ。とにかく一泊してから考えるとしよう。
目的地に近づいたところで、下車し、バイタクをつかまえた。リストを見せ、ホテルまで行ってもらう(5RMB)。ホテル(「新園大廈」)の前で降ろしてもらうと、フロントで宿泊料金を聞いた。フロントの服務員によると、一泊106RMB、80RMB、68RMBのホテルがあるという。(2星ホテルで68RMBの部屋は安すぎる・・・。問題があるに違いない。だいたいこのフロントの内装もボロボロじゃないか。もう少しましなところを探そう)と決め、ホテルを出た。
バイタクをつかまえようと車道に沿って歩くが、不思議なぐらいバイタクがこない。「潮洲市」や「梅洲市」でうるさいぐらいバイタクがやってきたのと対照的だ。観光地ではない小さな都市ではこれが普通なのかもしれない。
15分ぐらい歩いたところでやっとバイタクをつかまえることができた。リストの中の3星ホテル「湛江迎賓館」にいってもらう。ホテルに入って、フロントで宿泊料を聞くと、一泊100RMBと160RMBの部屋があるとのこと。(三星で100RMBとは問題があるんじゃないか?)と思ってとりあえず、部屋を見せてもらうことにする。100RMBの部屋と160RMBの部屋を両方とも見せてもらうが、設備はほとんど変わらない。服務員に聞いてみても、窓のあるなしだけの相違だということなので100RMBの部屋にチェックインした。
チェックインして、改めて部屋に入ってみると、なんだか部屋全体がひどくカビくさい。ここで一泊するのは辛いなと思い始めた。(あとで、消臭剤でも買ってくるか・・・)と考えながら、お茶をいれる準備をはじめた。棚を見ると、陶器のコップはなく、消毒済みと書かれている薄紙で覆わたガラスコップがお盆の上にあるのみだ。薄紙を外して、コップをみると、メチャクチャ汚い。汚れがこびりついている。中をのぞき込んでみると、内側に髪の毛がついている。(最悪・・・)。これでは、ポットの中のお湯にも問題がありそうだ。(仕方がない。とりあえず、ミネラルウォーターでも買いにいこう)。眠いのを我慢して外に出ることにした。