二日目は、ホテルの朝食バイキングを食べてから、もう一眠り・・・(バイキングはお粥やら焼きそばやら、可も不可もない朝食だった。300RMB以下のホテルなので、こんなところだろう)。今回は旅がメインではないから気楽だ。お昼近くになってようやく起床し、出発。歩くのを渋るZをなだめながら、南昌駅まで徒歩で行った。
十数分ほどで駅に着いたが、駅の周辺は工事の真っ最中だった。狭い道にぎっしり人が詰まっていたので、構内に入るのは諦めた。三年振りの南昌駅だから、中に入って追憶に浸りたい気持ちもあったが、これも運命だ。南昌駅の外観を写真に撮るだけで満足することにした。
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南昌駅<1> |
南昌駅<2> |
駅前からまっすぐ伸びている道路は、バス・ステーション代わりになっていて、市内や市外へ向かうバスがずらりと並んでいた。その中から、最初の目的地である「縄金塔」へ向かうバスを選んで乗車した。「縄金塔」は私たちが泊まっているホテルの前を通り過ぎて、数分ほどのところにあった。南昌駅へ行かなければ歩いて十数分ほどのところだ。曲がり角のところに、「灶王爺」と大きな看板を掲げた高級そうなレストランがあり、バスを下車したZが「あそこ、あそこでご飯を食べよう」と騒ぎ出す。だが、私は朝食をたらふく食ったので、まだお腹が減っていない。「良さそうなレストランだから、夕食に利用しようよ」となだめる。「○○(私の名前)は私を飢え死にさせる気?ひどいわ」とわめくZをなんとか「縄金塔」の方へ引っ張っていった。
歩いて5分ほどで「縄金塔」に到着。塔があったら登る。これが私の旅の鉄則!?である。Zは高いところがあまり好きでないらしく、「私は登りたくない~」と駄々をこねる。だが、私との旅で我が儘は許されない。私が行くところにはZも行くのだ。これまでも、一緒に登ってきただろうに。
細くて長い、梯子のような階段を登って上へあがる。危なっかしいが、木はしっかりしていて、私の体重で階段が折れてしまうということはなさそうだ。私が先に登って声をかけると、Zはぶつぶつ文句を言いながら登ってくる。塔の真ん中辺りで、「怖いからやだ~」とまだゴネるが、「ここまで来たんだから、一番上まで登ろう」と励ます。
どうにかこうにか、最上階に到着。南昌市内が一望できる。「どうだ。いい眺めだろう。登ってきてよかっただろう」とZに言うと、「まぁまぁね」と不承不承に同意を示した。
登るのも大変だったが、降りるのも大変。急な階段だから、足を滑らせたら、一巻の終わりだ。「Zが先に降りろよ」と勧めると、「嫌!○○(私の名前)が落ちてきたら怖いから」とのこと。なるほど、そりゃそうだ。私が先に立って、下ることになった。
追記(2007年1月23日):インターネット上の情報によると、毎年9月にお祭りがあり、「縄金塔」の通りいっぱいに全国各地の屋台が広がるそうだ。
「縄金塔」を出てしばらく歩いたところで、Zが「お腹が空いた。もう我慢できない」と言い出す。私は朝食をたっぷり食べたのでまだ昼には早い感じだ。「もうちょっと我慢しろよ」と言
ったが、「駄目!絶対食べる」と宣言してすぐ横にあった小汚い小さな食堂に入ってしまった。やむなく私も後に続いた。席に着くと、おばあちゃんが出てきて何にする?と尋ねてきた。Zは、「モヤシ、モヤシだけ炒めて!あと、ご飯もちょうだい」と答えた。おばちゃんは、困った様子で、「スープもどう?」と私に向かって話しかけてくる。私が「いや、俺はいらないんだ」と手を振って断ると、再びZの方を向いたが、「もやしだけでいいのよ」とZに冷たく宣言されてすごすごと引き下がった。
しばらくして、もやしをジャージャーと炒める音が聞こえてきた。Zは私を睨め付けて、モヤシだけなんだから文句ないでしょ!と言いたげだ。(まぁ、文句はないのだが、ちょっと我慢するぐらいできないのかな?)と毎度のことながら不思議に思う私だった。やがてお皿一杯のもやし炒めがテーブルの上にのせられ、Zは満足そうに微笑む。続いて、大きなどんぶりに山盛りのご飯も登場!田舎では当たり前のことだが、深センでの上品(?)な生活になれてしまったZには予想外のことだったらしく、鼻白んだ顔をした。「そんなに大きなの頼むつもりなかったんだけど・・・」と言い訳を
している。もちろん、私にとっても予想外だったが、「自分で頼んだんだから、ちゃんと全部食べろよ!」と冷たく言い放った。Zは開き直った様子で、食事にとりかかる。二、三口食べた後、「美味しいわよ。このモヤシ炒め!○○(私の名前)も食べてみなさいよ」と誘いをかけてきた。
モヤシにうまいも何もあるもんかと思いつつも、割り箸を取って手を伸ばす。「うん、美味しいね」。思わず声を上げた。肉は一欠片も入っていないのに、とてもうまい。Zは「ほら、美味しいでしょ」と自慢げだ。(いや、お前が作ったわけじゃないし・・・)。
少し食べて食欲を誘われたので、さらに箸を伸ばす。いや、なんだかお腹が空いてきた。二人で夢中になって食べ、モヤシが半分ぐらいになったところで、Zが「○○(私の名前)はもう食べちゃ駄目!」と言い出した。無視して食べ続けようとすると、皿を持ち上げて、ご飯の入っているどんぶりの上に、全てのモヤシをひっくり返した。「これで手が出せないでしょ」。どんぶりを抱えて食べ始める。おい、
それはないだろう。
お腹いっぱいになって満足したZは、「お会計」とおばちゃんを呼び出す。おばちゃんはブスッとした顔で、「6RMB」と答えた。「6RMB!」。びっくりする私たち。この辺りだったら、5RMBも出せば、それなりの定食が食べられる。もやしだけで6RMBとは高すぎる。Zはいったん交渉を試みるが、「6RMB」を繰り返すおばあちゃん相手に勝ち目はないとみたらしく、素直にお金を払った。「美味しかったけど、高いモヤシだったわねぇ」とつぶやくZだった。
次の目的地「滕王閣」へ向かう。「站前西路」を下って、「撫河中路」に出ると北に向かって進む。この通りは東側が住宅街になっているのだが、個人経営と思われる盲人按摩屋がやたらに多い。マンションの1Fを改造してお店にしているのだ。二軒や三軒なら、中国ではそんなに珍しいことではないのだろうが、数えてみただけでも、10軒を越えていた。(帰宅後、インターネットで調べてみた。いくつかの記事によると、南昌の盲人按摩は中国では北京に次いで有名なのだそうだ。1961年に北京で研修を終えた盲人たちが、汪氏の指導のもとで、南昌で最初の盲人按摩診療所を開いたのだという。それ以来、盲人按摩は急速に広まったが、近年は風俗まがいのサービスをする店が増加したり、乱立による競争の激化により質が低下し、かつての勢いはなくなっているとのことであった)。
「滕王閣」までの道のりは意外に遠く、なかなか到着しない。地図を改めて広げて検討してみると、あと一時間以上は歩かなければ着きそうもない
ことが判明した。バス停を見つけ
たZが「私はバスで行くわ。○○(私の名前)だけ歩いて行きなさいよ」と宣言し出す始末だ。
私もさすがに歩き疲れていた。何より、寒さが身に応える。Zと一緒にバスを待って乗車することになった。
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滕王閣へ行く途中 |
バスに乗って十数分で下車。ところが、下車するバス停を間違えて、だいぶ手前で降りてしまった。再び十数分ほど歩くことになった。
そして、「滕王閣」に到着。「滕王閣」は中国の四大名楼、また江南の三大名楼の一つである。江南の三大名楼のうち、湖南省の「岳陽楼」と湖北省の「黄鶴楼」はすでに訪れたので、これで最後の一つとなる。ちょっとした喜びだ。「黄鶴楼」は大通りに面していたが、「滕王閣」は少しひっこんだところにあった。シーズンオフということもあって、観光客は少なかった。堂々とした楼閣で、味わいとしては「岳陽楼」よりも、「黄鶴楼」に近かった。向かって右側に小さな楼閣がいくつもあって、その間を縫うように通路が走っていて、散策が楽しめるようになっていた。楼閣の各階に様々な芸術品が観賞用に並べられている。一番上では、無料の演奏会を楽しむことができる。各階からは、南昌市内が広く見渡せた。
追記(2007年1月23日):インターネット上の情報によると、同じく江南の三大名楼である「黄鶴楼」、「岳陽楼」よりも、高さ・面積ともに勝っているとのことだ。私の実感としては、「黄鶴楼」の方が高かった気がしたが、それは「黄鶴楼」が高台に建てられているためであったようだ。
「滕王閣」を出ると、来る途中で見かけた「足マッサージ屋」で一休み。たいていそうだが、地方の足マッサージ屋は深センと比べると値段が高い。しかし、
きちんと研修を受けてる場合が多いので、外れが少ない。ここでもしっかりマッサージしてくれたので、足がずいぶんと軽くなった。
店を出ると、もう夕食の時間だ。ガイドブックによると、「福州路」という通りに食事所が多いようだ。タクシーに乗って、そちらへ向かった。「福州路」で下車してぶらぶらと歩き回る。しかし、Zは途上にあった商業街の「勝利路」に行きたくてしかたないらしく、食事に乗り気でない。やむなく、再びタクシーで「勝利路」まで戻ることになった。
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南昌市福州路 |
「勝利路」は古くから商業街として栄えていたが、「八一大橋」の改修工事の終了とともに、人や車の流れが変わり、かつての繁栄は見る影もなくなったのだそうだ。そうした状況を改善すべく、政府主導で2001年9月から大々的な工事が行われ、2002年1月20日に歩行者専用の商業街としてよみがえったのだという。それ以来、
官民をあげて、偽物商品の撲滅に取り組み、現在の繁栄を勝ち得たらしい。
「勝利路」を歩き始めると、Zの目が輝いた。獲物を狩る猟犬のように、服飾店を睨め回している。うぅ、怖い。Zはそんなに大きな無駄遣いをするわけではない。しかし、店への滞留時間が長いので、私はその間やることがなく非常に退屈なのだ。一緒に店内で待っていると、いつまで経っても店を出ようとしないから、私はずっと外で待って寒い思いをして街並みを眺めているはめになる。こうした商業街に来るとたいていその繰り返しになるので私としてはあまり来たくないのだが、ショッピングはZの最大の楽しみだから妨げては、後に「あぁ、つまらなかった」などと言われてしまう。それで、やむなくつきあう次第だ。
「勝利路」の全長は1キロ近い。これを隅々まで見て回り、中山路に出たところで、ようやくZも満足した様子をみせた。「疲れたわ。そろそろ、夕食にしましょうよ」とのこと。「どこで食べる?」と尋ねると、
「どこでもいいけど・・・」と曖昧な答えだ。「じゃあ、昼間の『灶王爺』にするか」と言ってやると、「うん、うん」と首を縦に振って大喜びだ。夕食は、「縄金塔」近くの「灶王爺」に決定。
「灶王爺」の料理はやや甘口の美味しさだった。スープは特に美味しかった(スープは甘口ではなく、中華薬材スープ)。しかし、料理が出てくるのが遅かったため、Zはお怒り気味となり、大きな期待をもってやってきたにも関わらず、この店への評価は低かった。
夕食を終えると、ホテル前の果物屋で、Zがイチゴを一山買って部屋へ戻った。そう言えば、昨日もイチゴを買っていたな。
本日はこれでお休み。 |